10年ほど前に、直木賞作家を片っ端から読んだことがあります。
受賞作品リストを印刷し、読んだ作家をマーカーで淡々と消していく。読書の喜びに相応しくない、なんとも無機質な行為です。
何が目的だったのか今となっては首を傾げるばかり。
読み終わった本は譲るなり売るなりして処分しましたが、数冊だけ手元に残してあります。よほど面白かったのでしょう。
それなのに内容とか作家の文体とか覚えていないし、10年前の行為がいよいよ謎めきます。当時を思い出そうと、本棚の「父の詫び状」を読み直してみました。
著者の川上弘美氏は脚本家として活躍しました。直木賞を受賞し作家生活に入ってすぐに、飛行機事故で亡くなっています。
本書は幼少時代のエピソードが散りばめられた心温まるエッセイ集です。
父親とのハートフルな逸話に心を揺さぶられたことを思い出しましたが、僕の父は存命しているし10年前もピンピンしていたはずです。当時はよほど疲れていたのでしょう。
僕の好きなエッセイは総じて、自分を卑下しながら面白おかしく書き綴られます。これぞプロ作家の筆力。誰も傷つけずに面白い。
「面白き事もなき世を面白く すみなすものは心なりけり」ってことですな。うんうん。
おこがましいですが、僕のブログでも可笑しいなとか楽しいなとか全米が泣いたとか思ってもらえることが目標です。資産運用で揺れ動く心情を、生きる希望とともに本邦初公開し続けようと思います。