マイクを掴む彼女の手から汗が滲む。
影の濃い席に座る僕は、断続的に弾んで落ち着かない。隣の同僚がソファーの上に立ち、踊り狂っている。
ミラーボールのちゃちな彩色がフロアの喧噪を照らす。
壁に染み付いたヤニの匂いが包む金曜日、愛想笑いを固まらせるだけで精いっぱい。
無理に盛り上がっても帰り道が虚しくなるだけだ。
徒労感、諦観。
カラオケボックスにサラリーマンが溶けていく。
4月になりました。新しい決算年度の始まりです。
すがすがしい! 長すぎない芝生に寝転んで青空を見上げる気分。
実体での変化はありませんが、こういうタイミングでは気持ちを新たにするようにしています。
回転する地球の時間を勝手に区切って番号を振っただけなのですが、そんな野暮なことは言っていけません。
習慣を変えたり性格を変えたりする、区切りのチャンスです。
長い人生、定期的に志をリセットしてアップデートしていくことが求められます。
そう、飲み会です。
部署の奮起を促す宴会。
・・・。
まぁ、いいでしょう。
他部署から異動してきた人もいるから、新体制に慣れて親密な関係を築くため、お酒の力は有効です。
普段だったら聞けないプライベートの話もできるし、なんとなくテンションも上がります。
無茶にはしゃぐ人や、出し物の用意を強制されると面倒なのですけどね。
そういうのをやりたいひとだけでやればいいのに。きっと誰も来ないから。
お腹が膨れて酔いが回っても、勝手に退席できないことはストレスです。
偉い人が締めるまで待たなくてはならない。
So soな盛り上がりだったら席を巡って会話を楽しめますが、Excellentに盛り上がると悲惨です。
やばいテンションに飲み込まれて一体感が強制され、個性は圧倒的な集団性に埋没していく。資本主義を背負う、優秀なサラリーマンの製造過程なのです。
・・・。
それぐらいなら耐えられます。
年に数回のことだしね。部長の挨拶も、チームとの会話も、意外にも新鮮な気分で楽しむことができます。
思惑通り盛り上がった一行は、お会計が終わってからも居酒屋の前でぐずぐずします。
ホント迷惑。周囲からの白い視線に気づかんもんかね。
そして、カラオケに移動します。本気か。正気か。
みんなクタクタなのです。ただでさえ1週間の業務を乗り越え憔悴しているのに、僅かに残っていたエネルギーまで飲み会で開放し、さらにまだ今夜を続けようという意気込みたるや立派。
若手は中堅を気遣い、中堅は上長を気遣い、上長は若手を気遣う。
みんな気づこう。誰もハッピーじゃない。
楽しんでいる人も存在するかもしれませんが、確実に少数派です。本心で嫌がりながら付き合っているなら、貴重な時間の浪費です。お互いにね。
僕は流れに加わらないようにしているのですが、魔が差してしまい参加してしまいました。今、強烈な後悔に襲われています
もう絶対に参加しません。楽しんでいる少数派にも失礼だ。
いや、彼らも本当は早く帰って子どもの寝顔に癒されたいのかもしれません。
カラオケに参加しないから評価が下がるのであれば、僕は甘んじて受け入れます。それでマイナスイメージがつくのなら、構いません。
今のところ表立って不利益を被ることはないので、誰も気にしていないのでしょう。
周囲は、自分が思っているよりも、他人のことを気にしていないものなのです。
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