僕の理解のために、「株式投資の未来」の内容をまとめています。
強気相場に気を緩め、成長系企業へ積極的な投資をしたくなったときに読み直して、自分を戒めるのです。
第1部は「成長の罠」についてです。
企業の成長率を追い求め、話題の銘柄を買い漁り、胸躍る最新技術を探し回って、なるべく成長率の高い国へと資金を振り向ける。こうした投資アプローチは、低い投資収益率しかもたらさない。
長期的なデータを見るかぎり、過去に際立った運用成績を達成してきた銘柄は、斜陽業界や低成長国に属しているケースが多い。対して、新興企業や新興業界のリターンは、全体に冴えず、老舗企業を、たいていの場合、下回っている。
シーゲル博士は、1950~2003年のスタンダード・オイルとIBMを比較することで、新興企業に対する、伝統企業の投資対象としての優位性を訴えます。
期間中の年利利回りは、スタンダード・オイルは14.42%、IBMは13.83%でした。伝統企業のスタンダード・オイルに投資することで、より高いリターンを得られたのです。
本書の資料によると、期間中、1株当たりの売上高、配当、利益(EPS)はIBMが優位でした。対して、スタンダード・オイルが上回っていたのは、株価収益率(PER)と配当利回りです。
IBMは成長率では圧倒していましたが、スタンダード・オイルはバリュエーション(株式評価)で圧倒していたのです。
僕の所感ですが、IBMも13.83%なので、充分な結果です。ただし、競争の激しさというリスクを考えると、安定した業界で、より高い運用利回りを残せるのであれば、それに越したことはありません。
S&P500の当初採用銘柄のリターンは、更新を繰り返す実際のS&P500のリターンを上回り、しかもリスクが低い。平均すると、その後半世紀の間に採用された1000社近い新興企業の運用成績を上回っている。
新興企業は、収益や売り上げはいうまでもなく、時価総額でみてすら、古い企業を上回るペースで成長する。だが投資家が、その株式に対価を支払いすぎるなら、まともなリターンは期待できない。
新興企業が過大に評価されるのは、市場全体で共通する傾向です。企業の市場価値の増減は、リターンを押し上げはしません。
それでは、長期的に高いリターンをもたらす、「黄金銘柄」とはなんなのでしょうか。
それは、わずかな期待しかされていないが、実際の増益率は市場平均を大きく上回る銘柄です。
PERが高いとき、投資家は平均を上回る増益を期待している。PERが低いとき平均を下回る増益しか期待されていない。実際の利益が期待を上回ることで、リターンがもたらされる。
本書の資料によると市場平均のPERが17.45倍に対して、黄金銘柄は19.17倍です。
第3部で詳しく述べられますが、配当も重要な要素で、市場平均3.27%に対して、黄金銘柄は3.40%の配当がありました。
企業価値の増減が、リターンと一致しないことと同様に、セクターのシェア推移と、投資家が手にするリターンの推移も、一致しません。
前述のIBMが属するハイテクセクターは市場で占める比率が3%から18%に拡大したのに対し、石油は市場で占める比率は20%から5%へと減少しています。
むしろ、長期的に低迷する業界はときに、株主に際立ったリターンをもたらします。
期待が低下することにより、業績がわずかでも改善すれば、悲観的な予想を上回ることができるため、結果として投資家のリターンになって還ってくるのです。
成長株戦略(グロース投資)と割安株戦略(バリュー投資)は正反対ではありません。割安な成長株が、結果的に投資家にリターンをもたらすのです。

- 作者: ジェレミー・シーゲル,瑞穂のりこ
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