産業革命以前、コミュニティの単位は家族と地域でした。
共同体は互助関係にあり、貨幣のやり取りは発生してしません。
産業革命によって市場の力が増大すると、社会構造が変化します。
市場効率のために伝統のコミュニティを破壊すべく、権利を保護して「個人」という価値観を提唱したのです。
感情面での代替として国家コミュニティが育成され、市場というコミュニティも提供されました。
同じ嗜好を持つ消費者は、知り合いであるかのように振舞えるのです。
国家コミュニティが強化されるにつれ、政治文化が戦争を嫌ったことで全面戦争への不安がなくなっていきます。
戦争の代償が巨大化し採算性が悪化したことが要因です。産業形態が変わり領土の略奪と併合に意味がなくなりました。
平和が貿易や投資を呼び込み、経済的な交易による利益を生み出すのです。
億万長者物語のテイストが変わったなと思いましたか?
大丈夫です。ヤバい思想や方向性の不確かな宗教にハマったわけではありません。
資産額の増減にうろたえる相変わらずの日々を過ごしています。ご安心ください。
自分の人生を豊かにするためのミクロ的な生活ですが、人類の方向性と未来を見据えるために、人類を生物学的観点から俯瞰する「サピエンス全史」を読み解いているのです。
今までの読み解き記事は入口ページからどうぞ。
「認知革命」によって虚構を生み出して共有し、社会生活を加速させ文明を統合させた「農業革命」を経て、「科学革命」による進歩で富が拡大する概念を人類が手に入れたことを理解してきました。
今回はいよいよ最終話、歴史を紡いだ文明が果たして人類を幸福にしたのか、についてです。
それでは、読み解きを進めます。
革命は豊かさをもたらしてきましたが、幸福については提起しませんでした。
心理学者と生物学者が、人を幸せにする要因について科学的に挑んでいます。
調査では客観的な条件はそれほど影響がなく、持てるものに満足することのほうが重要だということを指し示しました。
社会経済ではなく、生物としての脳内信号が幸福を与えます。
人類は進歩していても、生物としての進化はしていません。文明の進歩は歴史に過ぎず、歴史は幸福にとっては重要ではないのです。
幸福のカギは、身体の中にあります。幸せになるためには、生物としての感情操作が必要なのです。
株価そのものではなく、株価変動による精神状態を管理することこそが資産運用での要点だという点と類似しています。 ・・・当然ながら本書に記載はなく、僕の考えです。
人類は自然選択の法則を打ち破り、知的設計によって進化を促しつつあります。
品種改良や去勢に留まらず、遺伝子レベルでの操作が可能になりました。
人類は生命の法則を変える3つの方法を手にしています。
1つ目は生物工学です。生物を改変し、絶滅種を復活させることも出来ます。
2つ目のサイボーグ工学では脳とコンピューターを直接つなぐことで、思考で操作できる身体機関や、チップを埋め込んで操作できる生物を造り出しています。
独自に進化するコンピュータープログラムやウイルスが3つ目です。自己複製の過程で意図的にエラーを発生させ、突然変異させることが可能です。
未来に何が起きるのかは分かりません。
原子力や宇宙への予測が当たらなかったように、インターネット時代の到来も予想することは出来ませんでした。
人類にできることは、進もうとしている方向に影響を与えることだけです。
「私たちは何を望みたいのか?」が重要な疑問となります。
人類は今、それだけの強大な力を手にしているのです。
これにて「サピエンス全史」の読み解きは終了です。
自分が読み返したときに容易に理解できるようシンプルにまとめてみましたが、興味を持った方は、是非原書を読んでみてください。多くの示唆に富んでいます。
人類が通ってきた道を理解することで、これから向かう方向を考える一助になると思います。