まず5時半に妻の携帯が鳴ります。
すぐに止まりますが、それから10分おきに鳴る。
6時には僕の携帯が鳴り、やはり10分おきに作動します。
6時半に設定にしておいた別アラームも作動し、なんとか布団から這い出します。
7時に遅刻を懸念した妻が大騒ぎし、7時半に子どもの支度の遅さを糾弾しながら僕も家を出る。
そんな、我が家の早朝。
今日は祝日です。
新成人の皆さん、大人の世界へようこそ。
資本家に搾取されちゃいかんよ。
若いうちに遊ぶのもいいけれど、少しでも早く多く稼ぐことをおススメします。
賃金労働からのニルヴァーナを叶えよう。
そんな誓いを立てる日なのに、鳴るアラーム。
成人の日だよ。お休みだよ。
妻が解除し忘れている。
時間差で僕の携帯も鳴り始めました。
アカンやないか。僕たちが成長できてないやないか。
祝日に平日設定のアラームで起きる。
資本主義の奴隷です。
休日は寝ようよ。
明晰に覚めた脳みそで19年前を思い出し、襟を正したいんだ。
19年前。
僕、もっと社会に影響を与えるはずだったな。
くだらない大人たちがつくったレールを歩かないはずだった。
おカネは充分なほど持っていて、思った通りに世界を変えようと思っていた。
はっ!
アカンやないか。
19年前に描いた自分を諦めているやないか。
平日にアラームで起きる日常を疑いましょう。
休日にアラームを鳴らすなんて、以ての外です。
毎日毎日、どこに向かって行進しているんだ。
二十歳の僕が目指した境地はあるのか。
退屈で無意味な業務へと誘うアラームで眠りを妨げられる。
そんな休日を望んではいなかった。
日の光とともに目覚め、お腹を空かせた子どもたちに朝食をせがまれる。
気の向くままに社会に貢献し、感謝を込めた報酬を手にする。
日が沈んだらお腹を満たして、少量のアルコールを嗜み就寝。
そんな毎日だろ。
アラーム解除を忘れた間抜けな自分に呆れつつ、そんなことを思い出したのでした。
大切なことなので、忘れないでおこうと思います。