億万長者物語

30歳100万円から運用を始め、39歳現在、資産額6,900万円。経済的自由を目指して、まだまだ頑張ります!


猛暑と背広

 

異常なほどの猛暑。

 

日本の夏は、いつからこんなにも暑くなったのだろう。

 

もはや、熱い。

 

新型コロナよりも熱中症のほうが危険だということは皆分かっている。

 

だが。

 

悲しい哉。

 

同調圧力への抵抗を諦め、マスクを装着して列に並ぶ。

 

先頭は僕だ。

 

ドア付近は停車のために熱風が入り込む。

 

少しでも奥に入りたい。

 

一本前の特急を見送って、先頭を確保。

 

同じ発想のサラリーマンが数人続く。

 

いつもと同じ時間、同じ車両。

 

毎日同じドアから乗り込む強敵たちだ。

 

列車が到着。

 

気圧が抜ける音とともに開くドア。

 

後ろからのプレッシャーには屈しない。

 

降りる人が優先です。

 

人間の尊厳を維持するための、最低限のマナー。

 

デッキに乗り込むと同時に座っている乗客の確認。

 

つり革を掴むときには、もう遅い。

 

その前から戦いは始まっているのだ。

 

次の停車駅で降りる乗客は熟知している。

 

それは、ライバルたちも一緒。

 

一瞬の遅れも許されないのだ。

 

湿った冷房の風、整髪料の匂い。

 

落ち着き、かつ迅速に動く。

 

オッケー。

 

今日も最良位置を確保した。

 

次の駅で目下の初老男性が降りる。

 

上手く身体を反転させて座席に座ろう。

 

文庫本へと没頭できる。

 

空気音。

 

閉まるドア。

 

背広姿のサラリーマンが走り込んできた。

 

ドア付近から舌打ちが漏れる。

 

構わずにスーツから飛び出た腹を器用に押し込む。

 

カラカラカラ。

 

携帯電話がデッキを滑っていった。

  

定期を括りつけた紐が引っ掛かったようだ。

 

周辺の乗客に謝りながら拾い上げる。

 

その背中には汗が染みついていた。

 

ああ僕たちの日常。

 

今日も、暑い。