億万長者物語

30歳100万円から運用を始め、39歳現在、資産額7,100万円。経済的自由を目指して、まだまだ頑張ります!


トイレの紳士

 

初老の男性が最寄り駅で転がっていました。

 

電車を降りるとすっかり夜。

 

日が落ちるのが早くなったものです。

 

恋しい我が家。

 

我慢をしていたので、まずは手洗所へと向かいます。

 

すると、入口に男性が座り込んでいるではありませんか。

 

上半身を壁に持たれかけ、柔和な顔には曖昧な微笑み。

 

投げ出した下半身はすらりと長く、ズボンは上品なウールです。

 

悠々自適の余裕ある佇まい。

 

公園だったら日向ぼっこといった風情です。

 

でも哀しい哉、ここはトイレだよ。

 

顔色は悪くないし、お酒の色も見られません。

 

目が合ってしまったので逃亡することも出来ず、声を掛けてみました。

 

大丈夫ですか?

 

ええ、大丈夫です。お気遣いなく。

 

優雅な返答が戻ってきました。

 

仕方がありません。

 

意を決して男性を跨ぎ、トイレに入ったのでした。

 

 

 

用を終えても男性は寝ころんだままです。

 

すれ違いで入ってきたスーツ姿のサラリーマンは露骨に顔をしかめています。

 

彼の手にはヨレヨレの使い捨てマスク。

 

何度も洗って使いまわしているのでしょう。

 

ああ。

 

上品な老人が蔑まれている。

 

再度声をかけ、手伝えることがないかを聞き出しました。

 

それでは、立たせていただけますか?

 

穏やかな口調で頼まれました。

 

成人を起き上がらせるために手抜きは禁物です。

 

しっかり身体を密着させ、抱きかかえる必要があります。

 

それは嫌だなぁ。

 

倒れていた理由も分からないのに。

 

言い出してしまったので、せめて横側に回り込み、肩を回して引きずり起こします。

 

悪い酒でも飲んだのでしょう。

 

男性がよちよちと歩き出したことを確認し、改札を後にしたのでした。

 

 

 

真っ暗な帰路を進みながら考えました。

 

・・・あの人。

 

とんでもない資産家で、お礼を申し入れくれたりしてね。

 

・・・。

 

僕は自分のこういうところが嫌です。

 

見返りを求めてしまう。

 

ええい!ぶんぶんぶん!!(雑念を振り払う音)

 

困っている老人を助けたってことでいいじゃないか。

 

子どもたちに誇れる素敵なことをした。

 

親切とお礼を結び付けてはいけない。

 

僕が経済的な自由を求める理由。

 

それは、しょうもない打算から逃れるためです。

 

無償の愛で世界を照らしたい。

 

子どもたちには、しっかりと伝えてあげようと思います。

 

トイレで倒れている人がいたら、その場を離れなさい。

 

そんなやつ、危険すぎます。