あかんかったなあ。
青空に向かって呟く。
白い雲が浮世離れした速度で流れていく。
ホンマに、あかんかったなあ。
自分の耳に届くよう、声を大きくしてみた。
呻き声は強風に煽られて、思いのほかに飛んで行ったらしい。
遠くのベンチで休んでいた老人が何事かと目を向け、すぐに逸らした。
僕の涙に気付き、ギョッとしている。
途方に暮れて公園まで来たものの、やることなどない。
風でころがるボールを追いかける幼児を見ていると自分の愚かさが際立ってくるようだ。
いっそふて寝を決め込めばよかった。
買わないと決めてから2ヶ月が経とうとしている。
もう時間だ。
買わなくてはならない。
株価の上昇が唐突であるとしたり顔でほざき、このまま無難に上がり続けてもそれは保険代であると嘯いた。
阿呆である。
2月に暴落など起こるはずもなく、米国の株価は調整を織り交ぜつつ上昇を続けている。
調子に乗った日本株まで連れ立って上げており、30年ぶりに30,000円台を回復したらしい。
世間の浮き足立ちが腹立たしい。
投入すべきジュニアNISAは3人分で、240万円。
購入予定はSPXLだった。
SPXLは株価好調にレバレッジをかけて爆騰しており、年初来で14.3%も上昇している。
240万円 x 14.3% = 343,200円
34万円もの値上がりを、ただ傍観していたのである。
もっともらしいことを述べて購入タイミングを遅らせたが、単に怖気づいていただけである。
なんとも滑稽な話ではないか。
宣言しておいた通り、暦が3月を告げればジュニアNISAを買い付ける。
これ以上の逡巡は糞にもならない
それから株価が下落を始めたら・・・。
稀代の道化である。
考える始めると恐怖で眼前が滲む。
また、子どものボールが風で飛ばされていったようだ。
カラフルな残像。
残された10日間。
真っ逆さまな株価下落を、阿呆のように願っているのである。