時間について考えさせられる児童文学があるそうです。
時間泥棒に奪われた「時間」を、少女が取り戻す物語。
なんのこっちゃ。
さして気にもしていなかったのですが、なぜか頻繁に見かけるようになりました。
本屋、図書館、YouTube。
流行っているのかな?
こういうことを、めぐり逢いと呼ぶのかもしれません。
または運命。
せっかくなので手に取ってみました。
「モモ」です。
(あらすじ)
町はずれの円形劇場あとに迷い込んだ主人公モモ。
静かにうなずく彼女に話を聞いてもらうだけで、町の人たちは幸せな気持ちになれるのでした。
しかし街には「時間どろぼう」の組織が潜み込みます。
時間貯蓄銀行に時間を預ける取引を持ち出し、人々の日々の時間を奪ってしまうのです。
増えるはずだった時間を生み出すために、ゆとりを無くして生きる人々。
世界は、あくせくするばかりの、喜びのない場所へと変えられてしまいます。
自分の時間を満喫しているモモは取引に興味をそそられず、世界から取り残されてしまうことに。
友だちや街の人々の時間を取り戻すべく「時間どろぼう」たちに挑んでいくのです。
(思ったこと)
本書に登場する時間に追われる人々は、言うまでもなく現代人の描写です。
時間を管理して有効活用することで、本当はほかの大事なことにまでケチケチしてしまっている。
画一的で、熱を失っていく生活。
僕たちは楽しい毎日を求めて頑張っていたはずなのに、いつのまにか時間に追われて日々の喜びを失っています。
現代社会では、子どもでさえ逃れられません。
進学に役立つ勉強に、社会性を育むための習い事。
1973年にミヒャエル・エンデが「モモ」で描写した社会そのものなのです。
時間を預けて将来の時間を生み出すという「時間どろぼう」の時間取引は、資本主義社会へのアンチテーゼでもあるでしょう。
貨幣を預けておいたらおカネが増える。
現代の金融システム。
僕たちはお金を増やしたくて死に物狂いで働きます。
でも待てよ。
お金が欲しくて働くのか?
幸せなひとときを過ごすためにお金が必要だっただけなはず。
働くほどに気力を消耗し、何をしても面白くなくなってしまう。
なにかズレていないだろうか。
時間とは生きるということです。
Time is moneyだなんていうけれど、時間はお金ではない。
人生そのものなのです。
人生を楽しむために、僕たちの今を大切に。
大切な家族や友人と過ごす時間。
その一瞬一瞬を愛そうと思ったのでした。