二女はタンポポを見つけます。
シロツメクサを集めてくるし、つぼみをつけたパンジーにも気が付きます。
スズランが散ったことも教えてくれます。
そんな二女と手をつないで歩けることが、僕のこのうえない喜びです。
あと、何年つないでくれるだろうか。
何十年も経った後で、再び手をつないでくれるだろうか。
散歩中の二女は急に立ち止まります。
先を行こうとする僕の手を必死に引っ張ろうとする。
なんだよー。
歯科検診までは時間がないのです。
寄り道していては遅れてしまう。
無理に連れて行こうとしますが、頑として動きません。
そして僕に教えてくれるのです。
花が咲いている、と。
二女はまだ110センチ。
地面に近いから色んなものを見つけられるそうです。
美しいものだけではありません。
よく分からない紐だとか棒だとかを拾い上げて喜んでいます。
汚いから触らないでほしい。
爪楊枝をつまみ上げようとしていたけれど、それは全力で阻止しました。
大人、捨てるな。
子どもにだけ見える景色があります。
大人にしか分からないことがあるように。
僕たちも歩いてきた道なんだけど、残念ながら忘れてしまっているのです。
駅へと急ぐようになり、置き忘れてしまった。
二女にとっては、いつもの道ではありません。
タンポポの綿毛が飛んだり、パンジーが咲いたり。
蜃気楼が立ったり、水たまりができていたり。
いつでも、昨日とは違った道なのです。
毎日を新鮮に楽しもう。
二女の手をつなぐ、今日という日に感謝するのでした。