億万長者物語

30歳100万円から運用を始め、40歳現在1億3,100万円。会社は辞めました。経済的自由を目指して、まだまだ頑張ります!


こいつはクソ恐怖なんだよ!

 

玄関が乱暴に開けられ叫んでいる。

号泣しながら呼ぶ声がかすかに聞こえる。

僕は読書を楽しみつつ、少し微睡んでいた。

カーテン越しにも強烈な日差し。

 

家族は公園に出かけた。

妻はウォーキングに汗を流し、長女はバスケットの練習。

長男は虫かごを持ち、二女はその手伝いをしている。

 

バッタを捕まえるのだ。

カマキリの餌が大量に必要になった。

 

長男が壁につかまったカマキリを捕まえるように頼んできた。

大人の手のひらほどあって僕も怖い。

背中から掴まえようと試みるが巨大なカマで威嚇してくる。

三角形に尖った顔、緑に染まった冷たい眼。

親とはなんと辛い役割を負うものなのだろう。

軍手をはめなんとか捕獲したのだ。

 

 

 

それまで飼っていたカマキリのカゴで飼い始めた。

よしておけとの忠告を聞かずに。

そして古参のカマキリは食べられてしまった。

いたたまれない光景ではあったが、昆虫で残虐性を学ぶのは情操教育に有効らしい。

そして、今では新入りの大型のカマキリだけが飼われている。

 

カマキリについては昨日も記事にした。是非目を通して欲しい。 

www.yabure-kabure.site

 

僕を呼ぶ声は止まない。

玄関に向かうと長男が狂ったように叫んでいる。

支離滅裂の説明を聞かされ、訳の分からないまま駐車場へと手を取られた。

 

妻と長女は車の外で笑いを堪えきれず。

二女はいない。

車のなかで長男に負けず劣らずの大泣きをしているのだ。

窓は締め切られていて、かすかに叫び声が漏れ聞こえてくる。

尋常じゃない。

 

 

 

帰宅直前まで長男は虫かごを眺めていた。

3匹のバッタを平らげて満足げなカマキリ。

自宅へと戻る車は駐車場へと入り、虫かごが揺れる。

二女が引き寄せようとして悲劇は起こったらしい。

地獄のフタがあいてしまったのだ。

 

絶叫する長男と二女。

運転席の妻と助手席の長女には何がなんだか分からない。

車が停車するなりドアを開けて長男は逃げ出した。

続いて降車しようとする二女を押し留め言い放ったそうだ。

「見張っとけ」と。

 

妻では太刀打ちできないと判断し僕を呼びに走ったらしい。

泣き過ぎていて状況は分からなかったが、車内を見て理解できた。

車内に転がる虫かご、身体を強張らせて泣く二女。

目線の先には運転席。

背もたれシートに張り付いたカマキリが見つめている。

 

車内から二女を連れ出す。

よかった、精神は崩壊していない。

安心するように伝えて僕は家へと戻った。

素手では無理だ。

軍手をはめて捕獲完了。

虫かごへと戻し平穏を得る。

 

 

 

数日後にカマキリは息絶えた。

怖気づいた長男がバッタの補給を滞らせたからかも知れないし、天寿だったのかもしれない。

泣かれ過ぎて生命バランスを毀損させた可能性もある。

 

横たわって動かなくなったカマキリを、それでも怯える長男。

意を決して虫かごを持ち出し公園に墓を作っていた。

大きめの石を選んだのは哀悼の大きさか、復活を恐れてか。

 

いたいけな墓標から伸びる影は長い。

夏の終わりが思われる。